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2018-01-05

Design Torget 8月

Design Torget 8月
自然を映し取るガラス

ストックホルム市街にある築100年を超える集合住宅には、インテリアデザイナーとして活躍している大学時代の友人、ハリエットの家族が住んでいます。南北に窓のある150・ほどのそのアパートは、当時のままの分厚い窓ガラスから、中庭の大きな木や対面する街がゆがんで見えます。彼女は部屋全体にあたたかくやわらかい雰囲気を作り出す、ガラスから射し込む陽の光をとても気に入っています。
ガラスは造形が自在な素材です。職人はまるでアメ細工のように熱く溶けたガラスを伸ばしたり膨らませたり、手品を見るように仕上げます。そんな本来の特徴をそのままかたち作った作家、彫刻家のエリック・ヒューグルンドは、1950年代、量産のできる均一な製品が好まれていたスウェーデンのガラス工場で、唯一どろっと溶けたガラスの素材感を作品に残しました。まるで、粘土に型押しをするようなガラスの造形です。工場のススや気泡をビンの中に押し込めた独特のデザインは、今も多くの人々に愛されています。彼は現在のコスタ社とボーダ社が統合される以前のボーダ社で、デザイナーとして多くのガラス器を製作しました。現在のコスタ・ボーダ社も南スウェーデンの森の中に工房があり、ゆったりとした環境の中で作られるガラス作品は、北欧独特の透明感を持っています。
北欧の厳しい自然の中で感じる一瞬の変化を映し取った、フィンランドのオイバァ・トイッカがデザインしたしずくのシリーズも50年以上前のものです。それが今も新鮮に感じられるのは、自分の周りにある美しい自然の感動を素朴で率直なデザインで表現したからでしょう。木々の葉陰のに射し込む光や、冬期の青白く美しい北欧の陽光も大いに影響しているようです。こうした季節の移り変わり、デザイナーや職人の手のぬくもりが伝わるスロイド(ルビ 手工芸)の味が魅力のハンドメイドのガラスからは、のびやかで自由な楽しさと同時に、われわれが日常の生活を楽しむ余裕を生みだしてくれるものだと思います。(北欧建築デザイン協会理事・プロダクトデザイナー)

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