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2018-01-06

Design Torget 7月

Design Torget  7月

「小さなおじさん」と「かわいいおばさん」

 北欧で一番人口が多い国スウェーデン(約900万人)では、最近出生率がのびています。少子化対策の一環としての政治的配慮も影響していますが、職場や公共機関すべてに子どもを含む弱者を基本とした考えが実践されています。例えば北欧では夫婦共稼ぎが当たり前のため、住宅街の近くには0歳児から預かるダーグヘム(託児所)が必ずあります。そのインテリアは、子どもたちはもちろん、働く保育士にとっても居心地のよい空間であることが重要です。ですから使われる家具、木製の子ども用キッチン、カーテンや家具の張地そして床、壁、天井の仕上げに至るまで、アトピーや汚れの防止策が施されています。そしてあたかも自分の家と同じような環境を作り、子ども達の緊張感を与えない、自由でのびのびとした空間を目指しています。
 夏は家族や保育園でも子どもを連れて近くの森へ出かけますが、子どもたちが小指ほどの小さな花々を見つけて「これは摘んではいけないよ、みんなの花だからね」と口々に話しながら散歩する光景を目にします。そこには幼い頃から自然を大切にする公共性を自然に身に付ける教育がされていることに感心させられます。
休日にはストックホルムのような大きな街でも、乳母車に子どもを乗せ、ショッピングや散策を楽しみます。それが出来るのはやはり地下鉄、バス、ミュージアム、ショピングセンター全てにノーマライゼイション(*)の考え方が行き届いているからでしょう。
 スウェーデンの親たちが幼児に対しても、子どもじみた接し方ではなく、出来るだけ対等な話し合いをしているのを見かけます。彼らの目線になるようにいつも大人がしゃがみ込み、“Lilla Gumma”(ルビ リラ グッマー)(かわいいおばさん)“Liten Gubbe”(ルビ リーデン グッパー)(小さなおじさん)と子どもにやさしく呼びかけるなんともほほえましい接し方をします。それは子どもたちが臆することなく、自分の要求を大人たちに主張する中で、民主的でお互いが納得できる話し合いをするための、呼びかけの言葉のようにも聞こえます。(北欧建築デザイン協会理事・プロダクトデザイナー)

(*)1960年代に北欧から始まった、障害者などが地域でふつうの生活を営むことを当然とする福祉の基本的考え。またそれに基づく運動や施策。

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