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2018-01-07

Design Torget 6月

Design Torget 6月
フィーカ・注ぐもの

 北欧スカンジナビア半島の一国スウェーデンは、南北に長く、国土は平坦で、およそ2/3を森林が占める林業が盛んな国です。その森林で働く労働者たちは、休息の時間に熱々の「コクトコーヒー」を飲む習慣があります。これは、煮出したコーヒーのことで、思ったよりまろやかで苦味がなく、豆本来の甘みが残るたいへん美味しい飲みものです。砂糖の少なかった昔の北欧では、まず角砂糖を口にほおばり、熱々のコーヒーを少しずつソーサーに移して飲む習慣があったようです。
スウェーデンの製陶所グスタフスベリエ社で、1955年に発表されたStig・Lindberg(スティーグ・リンドベリ)デザインの「テルマ・シリーズ」(写真)は、直火で使える素材から開発された調理器具のひとつで、そのコーヒーポットはまさに、コクトコーヒー用としてデザインされたものです。もちろんドリップ式としても使えますが、その材質は宇宙ロケット発射の目的に開発された素材で、ストーブやかまどなどにも直接置くことが出来る耐熱ポットです。デザインは土器のような素材の質感を生かし、スウェーデンの伝統的なフォルムを残した味わいのあるものです。
世界の中でもコーヒーの消費量が多いスウェーデンの人々は、一日に平均5回の「フィーカ」と呼ぶコーヒーブレイクがあります。朝食時、仕事場の10時の休みと昼食、3時にはカフェブレッド(少し甘いパン)と一緒に、さらに夕食後のお茶の時間にキャンドルをともしながら家族や仲間と共に楽しみます。そのゆったりした時間の演出には、カップ&ソーサーもそうですが、ポットやジュースやミルク用のピッチャーのデザインも重要な要素です。ある夏の庭でエルマおばあちゃんがコクトコーヒーと、手づくりクッキーでもてなしてくれた味は、今も忘れられません。他愛のない会話と夏の静かな庭の一隅で過ごす時間は、北欧の人々の生活の中で大切なひとときです。(北欧建築デザイン協会理事・プロダクトデザイナー)

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