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2018-01-08

Design Torget 5月

Design Torget 5月
自分流に住まう

私たちの生活は欧風化してか、かなりの時間が経過したにもかかわらず、まだ借り物の洋服のように自分に十分、似合った生活空間を確立していないところがあるようです。もっと自分流の部屋の「しつらえ」を目指したいものです。
特に自分らしさのある空間を見せてくれる北欧の人々の生活や道具は、美しく機能的なばかりではなく、手のぬくもりや自由な発想からくる、かわいらしさやユーモアのある造形が魅力ですが、そこには北欧の人々が培ってきた、SLOJD(スロイド)(手工芸)の存在が大きいと感じています。つつましく古いものを大切にする精神、そこから生まれる清潔感あるシンプルさ、ハンドメイドの肌合い、それは日本人の感覚に合致しています。受け継ぐものを大切にし、時間の経過から“なじむ”ことへの愛着、最小限に必要なものに囲まれて暮らす。そして最後に自分の味を加える。何が大切で、何が必要か、自分たちの愛する空間を自分たちの手で作り上げる楽しみを、安らぎと穏やかさを本当の意味でわかっているような気がします。
例えば茶道の精神は、身分の差を越え、人としての一期一会を楽しむものです。そして、茶道にみる“見立て”には、季節や客人に合わせた自由で心温まるもてなしの心があります。そこには道具や空間を時間をかけて選び、自分流のもてなしを作り上げる楽しみに通じるものを感じます。空間の重要な要素である家具についても機能的で安全で美しくあることはもちろんですが、自由なしつらえにとって必要なものとは何かといった考え方で、空間や道具を選ぶことで、より家族に沿わせたしつらえになるのではないでしょうか。写真のMAKI(マキ)シリーズは自然の皮革とブナ材をオイルフィニッシュにした家具で、年月がたつに従ってアメ色に変化する美しさや、自分流の座り心地と使い込む味を残しました。言い換えると、完成を使い手にゆだねた家具です。(北欧建築デザイン協会理事・プロダクトデザイナー)

(写真)椅子張りの皮革は、植物タンニンでなめしたドイツ製のヌメ皮で、使い込むうちに身体になじみ、アメ色に変化する。

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