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2018-01-09

Design Torget 4月

Design Torget 4月

スティ-グ・リンドベリとスロイド

 北欧の国々では、古くから伝わっている家庭工芸をスロイド(SLOJD)といいます。今でもスウェーデンでは、単に家庭内手工芸の普及や技術の保護にとどまらず、学校教育でも手を動かし、手で感じるモノづくりを重要な柱のひとつにしています。
授業では木工芸や織物、陶芸といった生活に身近なものを作ることで、じっくり素材と向き合い、手と素材が対話するような手工芸のもつ温かさを学んでいます。できあがる行程を体験することにより、作り手への思いやりや達成感、インテリアデザインの感覚や「良質のモノ」とは、といった価値観を養う教育が国民全体にゆきわたっているのです。 1950年代、戦争を回避したスウェーデンでは、それまで発表できなかった自由で楽しいデザインが生活に潤いを与えた時代です。そのなかで、最大の製陶所グスタフスベリエ社では、若いデザイナー、スティ-グ・リンドベリが活躍し、数多くのデザインを生み出しました。
「ファイアンス」という土器の一種で、低温で焼く彩色の美しい少量生産の芸術的な作品を残す一方で、今も愛好家が多い日常使いの食器も手がけました。これらのデザインの源には、スロイドが感じられます。陶芸の職人の繊細な技術を前面に出すだけでなく、フリーハンドの手の味わいを残す独特で自由な発想から生まれた器には、それまでの食卓にはなかった楽しさや新しい美を作り出し、多くの人々に受け入れられました。
スロイドには、家庭工芸(HEMSLOJD),手仕事(HANDVERK)、民芸芸(KONSTSLOJD)、FOLKKONST(民芸芸術)など意味が含まれており、芸術と工芸の境が日本ほど鮮明になく、その価値の根底には自然素材への愛着と、人々の生活を豊かにするための手仕事や自由な精神から生まれるものへの敬愛があるように思われます。ですから彼の作品は、どの時代も、誰にでもわかりやすく、ぬくもりを感じるといえるでしょう。
(北欧建築デザイン協会理事・プロダクトデザイナー)

(写真)独特の茶目っ気と遊び心のあるイラストが描かれた黒の絵皿。

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