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2018-01-11

Design Torget 2月

Design Torget 2
木のカトラリー

 北欧の玄関口ともいえるデンマークは、平坦な土地に森林が点在しています。多くはブナやカバなどの広葉樹で、強い粘りがある家具用材。そして隣国のスウェーデンに渡ると、赤松や杉などの針葉樹森と白樺と湖に囲まれ、様子は一変します。北欧と日本は自国の木材資源の豊かさという点で共通し、金属にはない優しい感触と、香り、肌合いなど、時間が経過するほどに魅力を増す木の味わいを大切にする文化があります。また、北欧の森にはトロルという小さな妖精が住んでいると伝えられ、北欧と日本の、自然への畏敬や愛着から、そこにつながる簡素なデザインに価値を見出すといった感性も同じように思います。
スウェーデンには、香木で成長の遅い“エン”や赤松など加工性のよい木を使ったハンドメイドのバターナイフやジャムスプーン、チーズスライサーなどのカトラリー、パンやチーズのカッティングボード、日本の「曲げわっぱ」と同じ技法を使ったパンカゴなどの日用品があります。先日スウェーデンの友人宅を訪問した際、朝食に添えられた、飴色になった木製のバターナイフをさして「これ、覚えている?」とたずねられました。それは30年ほど前、私が作リ、プレゼントした魚形のバターナイフでした。彼らが今も大切に使ってくれていたことに、あたたかい優しさを感じました。
北欧ではすでに植林置換によって木材資源の枯渇を防ぐ施策がとられ、自国の素材を使った住宅や木製品を、大切に計画的に生活の中で生かしています。そんな彼らの、手作りのぬくもりや木の味わいを大切にするライフスタイルから、学ぶことは多くあります。それらは、現代の機械を使った量産品にも表れており、今日の北欧デザインのテーマになっているように感じるのです。

(写真)パンやチーズを載せて食卓に出す白樺材の耳付きボードと木製のカトラリー。
木を薄く裂いて蒸し、型に沿わせて曲げる技術は、まさに日本の「曲げわっぱ」。サーバーは、香木の“エン”で作られ、しなやかな軽い使い心地。

選・文/須長壮太郎 撮影/小林康浩

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